a-worksでは定期的に、クライアントさまと共に弊社との取り組みを振り返っています。
今回の対談相手は、国産にこだわった博多辛子明太子を作り続けている老舗食品メーカー・島本食品の外尾(ほかお)さま。博多みやげとして高い人気を誇る島本食品の辛子明太子は、自社運営の通販サイト辛子明太子の島本でも購入が可能です。
2020年夏から通販サイトの広告運用を担当してきたアカウントプランナーの溝端と井手が島本食品の本社にお邪魔し、たっぷりとお話をうかがってきました。
広告運用から3カ月で迎えた歳暮商戦が前年比2倍以上の売上に
井手:やっとリアルで外尾さんにお会いできてうれしいです!
外尾さま(以下外尾):こちらこそうれしいです。井手さんとはずっとリモートでしたもんね。でも普段から密にやりとりしてるから初めましてって感じはぜんぜんしないですね。今日はどうぞよろしくお願いします。
溝端:こちらこそよろしくお願いします。島本さんとは、最初にお引き合いをいただいたのはたしか2019年頃だったと思うんですけど。
外尾:そうですね。契約の確認や担当者の異動がありちょっと間が空いてしまいましたが、私が後任を引き継いで実際にa-worksさんとお取引をスタートしたのが2020年の夏頃ですかね。
溝端:明太子って贈答品需要がかなり高い商品だと思うんですが、島本さんの明太子は、実店舗もオンラインでも直営店舗でしか購入できないんですよね。楽天やAmazonなどのECモールには卸してないことを知って、すごく驚いたのを覚えています。
外尾:そうですね。明太子業界は一般的に卸売業者を介して小売店に並ぶことが多いんですが、当社は創業当初から直接販売のみ。卸売を通さないぶん、原料費にまわして品質向上につなげたいとの思いから、お客さまに直接お届けするスタイルを選んでいます。
1976年(昭和51年)に創業した当初は、ほとんどが地元のお客さまでした。そのうち、中元や歳暮で送っていただいた先の他府県の方々から「人からもらった明太子が美味しかったからまた食べたい」と問い合わせをいただくようになり、それを機に通信販売がスタート。ありがたいことに宣伝広告費をかけずとも口コミで評判が広がっていって、全国から注文が入るようになっていました。
溝端:公式の通販サイトをオープンされたのは1998年とのことですが、世の中全体で見てもかなり早いタイミングですよね。
外尾:リピーターの方から「ネットで注文したい」という声があったため、その受け皿としてオープンしました。とはいえ当時の割合で言うとネット注文は微々たるもので、電話とFAXによる注文が95%を占めていたと思います。ですので当初の通販サイトはあくまでも既存のお客さまの利便性アップのために用意したもので、「新規のお客さまを獲得したい」という目的ではなかったんですね。
外尾:通信販売で購入していただいたお客さまへは定期的にカタログギフトをお送りし、リピート購入につなげていました。1年を通して固定ファンの方々に支えられていたものの、やはり大きな売上を占めていたのは中元や歳暮をはじめとする贈答品需要です。もちろん今も大きな市場ではあるんですけど、徐々に縮小傾向にあるのは感じていました。通販サイトは毎年20〜30%の伸びはありましたが、新規顧客を開拓するためにはもっとインターネットを活用する必要があるのではと考えていたタイミングで、a-worksさんを紹介していただいたんですね。
現実的すぎるロードマップに驚き
外尾:最初、溝端さんからウェブ施策戦略のロードマップとシミュレーションを見せていただいたときに、すごく驚いたんですよ。というのもね、数字がリアルすぎて。
今だから言えますけど、イメージしてたよりも意外と伸びないねって思いました(笑)
溝端:そうですよね。外尾さんが予想されてるより低いだろうなとは、感じてました(笑)
もちろん予算をたくさん投下すればできることは増えますし、それによって件数を伸ばせるかもしれない、とも思います。でももし本当にそれが大事な戦略なら、そういう手法が得意な代理店さんと取り組まれる方がいいと思っています。ですから島本さんへの提案にあたっては、お金かけて露出を増やすのではなく「a-worksが得意とするコンテンツマーケティングを活用してどう価値を出すか?」「島本さんの魅力を、どのように消費者に届くように伝えるか?」を、我々なりに考えていました。
溝端:拡大することだけが必ずしもその企業さまのためになるとは限らないので、どのお客さまに対しても、「うちと取引すれば爆発的に売上を伸ばせますよ!」と提案することはまずありません。実際にお仕事をスタートする前に、担当させていただく企業さまが何を実現したいのか、そのために何が必要なのかというステップとそのシミュレーションをまずお見せして、両社で合意した方向に向かって同じ目線で走っていける関係を築くことを大事にしています。
外尾:過去にいくつかの広告会社や代理店さんがいろんな提案をしてくれましたが、予想よりも低い数字を提示されたのは初めてのことでした。もちろん、みんな風呂敷を広げているんだろうなとも知っていましたけどね。
だから、溝端さんが出してくれた数字がリアルなのは理解しつつも「もうちょっと予算かけたらもう少し早く売上を伸ばすことができますか」って何回か聞きましたもん(笑)
溝端:ありましたね(笑)
外尾:お金のチカラでなんとかなるのか、どうなのかと(笑)
溝端:もちろん、広告枠って無限にあるので、買おうと思えば買えるんですよね。でも、例えば多くの人が使用しているプラットフォームなど、多くの人が見る媒体に高い予算をかけて広告を載せることが島本さんにとって意味があることなのかは、一度議論しませんかと。
というのも、露出を広げすぎて島本さんというブランドのオリジナリティや価値が薄まってしまったり、伝わりにくくなったりしてしまうのはよくないと当初からずっと思っていて。ですので外尾さんからそうした質問をいただいたときも、本当にこだわって作られている商品だからこそ、ちゃんと届くべき人に届けるという視点を大事にしたいんですよねといった話をさせていただいた記憶があります。
外尾:それを聞いて「すごく誠実な人だな」と思いましたし、中長期的なことも踏まえて大きな視点で考えたら確かにそのとおりだとすごく納得したんです。それから実際に広告運用をスタートしたのが、20年9月からですかね。
この施策がいずれ大きな成果につながるはずだと期待は抱いていましたが、運用を開始して1〜2ヶ月は、大手を振って会社に報告できる状態ではなかったですね。だから、実は社長には報告していませんでした(笑)
溝端:すみません(苦笑)
外尾:でもしばらくして、「なんか手応えが出てきたな」と思い始めたのが、開始から3ヶ月後の11月下旬くらい。そうして迎えた、12月の伸び方ががすごかったですね。心から「やっといてよかったー!」って思いました(笑)
溝端・井手:ありがとうございます。
外尾:もともと12月は当社の繁忙期ではあるのですが、例年とは比較にならないくらいの数の注文があり、なによりも新規のお客さまがものすごく増えました。受注数も過去最高を記録したので、これは夏から手掛けてきた広告運用の成果ですよって、社長にドヤ顔で報告させてもらいました(笑)
溝端:いやーそれはなによりです。
外尾:本当に、これは一体どうなっとるのっていうくらいの状態で。いや、そういう施策をしていただいた結果なんですけど(笑)
外尾:社内で誰もそんな予想はしていなかったから、受注担当からは「今日も終わりませんよ…」「帰れませんよ…」という声が出てきたりもしてね。僕は「でもね、会社としてこんなにありがたいことはないよ。a-worksさんのおかげで新しい人にも買ってもらってね、今までこんなことなかったことやけえ、がんばってやろうや」ってなだめてまわっていました(笑)
溝端:うれしい反面、申し訳なさも感じるエピソードですね(笑)
ブランドの成長に貢献できる広告提案を
外尾:話は少し戻りますけど、井手さんがチームに加わってくれたのは歳暮商戦の少し前、10月末くらいからでしたよね。当初からすごくアクティブに動いてくれる人だなという印象はあったんですけど、うちの担当になってすぐに、アフィリエイトメニューを持っていないメディアさんにもお声がけをしてくれました。あれが、実はめちゃくちゃうれしかった。
井手:本当ですか!うれしいです。
溝端:井手がメディアさんと直接打ち合わせしているとの報告は受けてたんですけど、正直うまくいくとは思っていなくて。我々とのお取り組み内容に合意していただいたと聞いたときは驚きましたね。
外尾:僕も驚きましたし、わが社のために自分で考えて動いてくださっているという姿勢に胸を打たれました。フォーマットにのっとった仕事だけじゃなくて、「もっとこんなアプローチをしたら、新しい販路が開けるんじゃないか」「新しい顧客層を取り入れられるんじゃないか」と、型にはまらずに発想していただいてるんだというのを知って、ちょっと、いや、かなりうれしかったです。
それにプラスして、アップされた記事を読むと「うちのことよくわかってるよなー」と思わされる内容が多いんですよね。ブランドが出過ぎているわけではないのに、さりげなくしっかりとよさを伝えてくださっている。発信された記事を読みながら、「そうそう!うちが言いたいのはこういうこと!」と膝を打ったこともたくさんあります。
井手:メディアさんに記事を執筆していただくときは、島本さんの商品の特徴や魅力を具体的に丁寧にお伝えするようにしています。メディアさんが発信してくださるときに、何とかして島本さんの魅力を余すことなく伝えてもらいたい!という点を意識していますね。
外尾:我々が気が付かなかったような切り口での発信を見て、自分たちの強みを知ることも多々あるんですよ。例えばインスタグラマーさんとの施策は、これまでに僕たちがやってきた見せ方とはだいぶ変えた提案をしてくれたんですよね。井手さんの工夫と働きかけのおかげで、新しい販路を開拓することができました。
井手:インスタグラマーさんに打診した理由としては、島本さんの商品の魅力をもっと消費者目線で伝えることができないかなと思ったからです。高級品、贈答用のイメージが強かったので、日常使いができるアイテムもたくさんあること、手軽さや便利さも発信したいと思い、主婦のインスタグラマーさんにお声がけしました。
井手:インスタグラマーさんとの取り組みは、私自身もすごく勉強になりました。写真1枚をドーンと使ってその上に文字がある、という伝え方はインスタグラムならでは。「濃さの衝撃!」などキャッチーなキーワードの使い方とか、見せ方がすごく上手で驚きました。
外尾:どのメディアさんも、井手さんの熱量があるからこそクオリティの高い発信が実現できていると思っています。先日、a-worksさんとメディアさんとの打ち合わせに同席させていただいたときに、井手さんが僕以上に島本のことを熱く語っているのを見て、一瞬「あれ、うちの社員だったっけ」って錯覚したくらい(笑)
そのときはたまたま同席させていただいたけど、たぶん僕がいないところでも同じ姿勢なんだろうと思いますし、僕たちが知らないところでそういう動きをしてくださってることが、こうして成果として出ているんだと思わされた出来事でしたね。
溝端:これはほかのメンバーにもよく言っていることなんですが、僕らがやってることって、ダイレクトマーケティング・コンテンツマーケティングではあるんですけど、突き詰めるとブランドビジネスなんですよね。だから、ASPやメディア事業者との条件調整なども仕事のひとつではあるんですが、それしかしない伝書鳩なら意味ないよね、この仕事がどうあれば三方良しになるか、どうあればブランドの良さが消費者に伝わるコンテンツや取り組みになるかという問いに向き合い続け、最適な戦略をデザインする必要があるよねと、かなり口酸っぱく伝えています。
外尾:素晴らしい考え方ですね。溝端さん、井手さんはじめ、みなさんが本当にそう思って動いているからこそ、a-worksさんのビジネスは差別化されているんだと感じます。
一緒に成長できる関係性に感謝
外尾:実は、今だから言えることなんですが…a-worksさんと契約する前、最初に溝端さんから提案を受けたときは、話の半分くらいしかよくわかっていなかったんですよ。
溝端:ええ!?ぜんぜんそんなふうに見えなかったですよ。
外尾:わかってるフリは上手ってよく言われます(笑)
当時はまだは溝端さんと距離もあったし、「こんなこと聞いたら舐められるばい!」と思って、わかるフリをしてた(笑)
溝端:でもわかります。広告代理店って、相手を説得することで予算を取りに来る、というようなイメージがありますもんね。
外尾:そうなんです。だから構えていましたね。昔からいろんな営業さんから提案をいただきますけど、広告やウェブの話って、人によって言ってる内容がバラバラで。こちらからしたら、もうなにが正解かわからない。だから、最初はa-worksさんに対しても若干の警戒心はありました。
外尾:過去に、こちらに知識や経験があまりないことがわかると、上から目線の態度になったり肝心なところをごまかしたり…という人もいてね。
そういう意味で印象的だったのが、溝端さん井手さんとKPIの話になったときに「恥ずかしながらそもそも目標値がないんですよ」とお伝えしたら、2人がすぐに「じゃあ一緒に作りましょうよ」って言ってくれたこと。馬鹿にするでもなく、すごく自然に提案してくれたことがうれしかったですね。
井手:外尾さんのお話を聞いて、僭越ながら、私は一緒に成長させてもらってたんだなってすごく思いました。私がa-worksに入社したのが20年10月で、ちゃんと受け持った初めてのクライアントが島本さん。未経験転職だったので勉強をしながらいろいろな提案をさせていただいていたんですけど、外尾さんは何事にも興味を持ってくださるんですよね。どんな提案もいったんはぜったい受け入れてくださるという安心感があったから、いろんなチャレンジができたんだと思います。
外尾:いやいや、のちに井手さんが未経験転職と聞いて驚きましたもん。そう思うと、井手さんは伸び率がすごい。一緒に成長と言っていただきましたけど、僕は完全に置いていかれています(笑)
溝端:井手を見ていて感心するのは、自分が島本さんの社員だったらどうするだろうと常に考えていること。施策を考える際にも、私が島本さんの社員ならこういう見え方はうれしいけどそういう見え方はうれしくない、といった視点での話がよく出ます。
外尾:ありがたい話ですね。顧客目線ってよく言いますけど、それを本当に実行できる人ってあんまりいらっしゃらないと思います。それを、井手さんからはすごく感じますね。
井手:ありがとうございます。単純に私、島本さんのファンなんだと思います(笑)
オンライン/オフラインの枠を超えた施策でさらなる成長を
外尾:実は最近、メディアをきっかけに実店舗へ足を運んでくれるお客さんがものすごく増えているんです。店舗で「何を見て来店されましたか」というアンケートを取ったこともあるんですが、特に名前が挙がるのはSTAY MINIMALさんの記事ですね。
外尾:僕たちとしてはすごくありがたいことなんですけど、冷静に考えたら、「a-worksさんにとっては意味がないのでは…」と心配になることも。実店舗の売上が伸びてもa-worksさんの収益にはならないですし。
溝端:そんなことまったく思ってないですよ!本当に、すごくうれしいです。
もちろん現在のメインの支援は公式サイトへの送客ですけど、将来的には、明太子といえば島本さんとイメージされるくらい、全国的な認知度をもっと高めたいという気持ちがあります。その実現のために、オンラインを活用しながら実店舗への送客を図ったり、全国で島本さんの明太子に触れられる仕掛けを作ったりと、オンラインとオフラインを融合した施策にも取り組んでいけたらと思っています。
井手:実店舗を持っていらっしゃるお客さまのEC支援は、ぜったいにリアルも巻き込んだほうがいいと思います。今後、コロナが落ち着いてみんなが気軽に出かけられるようになったら、島本さんが定期的に開催されている「出来たて明太子を楽しむ会」を全国の人に知ってもらえるような企画ができたらと考えているところです。
外尾:先を見据えていろいろ考えていただいていることがうれしいですね。たしかに、実店舗をコンテンツのひとつとして捉えてそこからの発信も強化していけば、オンラインもオフラインのどちらもを伸ばすことができそうですし、すごくおもしろい取り組みになる予感がします。
…普通の代理店さんはここで「ここからはオプション料金です」って言いそうだけど、a-worksさんは言わないんだよねえ。お金がかかる話はちゃんと言ってくださいね(笑)
溝端:お気遣いありがとうございます(笑)ちゃんと言います(笑)
外尾:実は昨年からのネット販売の伸びを受けて、会社の方針としてネット販売を事業の柱に掲げることが決まりました。これを牽引してくれたのは、間違いなくa-worksさんです。
感謝していることを挙げると数え切れませんが、一番は、島本ブランドとインターネットの可能性に気づかせてくれたこと。社内の意識も変わり、ウェブを活用したアイデアがたくさん出るようになりました。これからも、a-worksさん、島本食品、お客さまと、三方良しの関係を築き続けたいですね。
外尾さま、貴重なお時間をいただきありがとうございました!
実はa-worksにとって、島本食品さまは初めて手掛ける「食品ジャンル」。新たな挑戦ではありましたが、オンラインでの成果だけでなく実店舗への送客にも寄与できたと聞き、非常にうれしく大きな自信につながりました。
もちろん、このような結果を出すことができたのは、a-worksのみの力ではなく島本食品さまが同じ熱量でさまざまな施策に取り組んでいただけたから。長期的な視点でブランド成長を考えること、コンテンツマーケティングを通じたファンづくりの重要性を、改めて実感することができました。
a-worksにとっても島本さんは、さまざまな取り組みに一緒にチャレンジできる大切なパートナーだと思っています。これからも、末永くよろしくお願いします!
photo by: SHOTA MISUMI