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セールスに過激な表現はいらない。大切なのは「誰に何を伝えるか」。真摯に消費者に向き合うことで「売れるブランディング」を実現

目薬をはじめとするアイケア商品を主力に、化粧品や一般用医薬品など幅広く商品を展開するロート製薬株式会社。2023年には創業から124年を数える、日本を代表する老舗企業です。

2022年6月。ロート製薬さまから「a-worksに新しいブランドの立ち上げからすべて手伝ってもらえないだろうか」とお声がけいただき、a-works初となる「ブランド立ち上げプロジェクト」に参画することに。前の記事では、2022年11月に発売となったまつ毛美容液「ラッシュリッチ」に関する取り組みと成果について振り返りました。

【前半記事】ロート製薬の新ブランド立ち上げの舞台裏。認知から購買まで、顧客行動のすべてを戦略化し臨んだ結果は…!ライブ配信を活用した試みも

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(左から)ロート製薬株式会社 D2C事業部 広告デジタル推進グループ マネージャー あきさん、マーケティング本部 D2C事業部 ひらめさん、a-works アレンジメントマーケティングチーム 百々(もも)雅章、コピーライター まさよ、ULTRA SOCIAL株式会社 CEO 高橋 亮太さん。対談には、ロート製薬株式会社 D2C事業部 れなさんにもリモートでご参加いただきました。
  1. 人も商品も「乱暴な出会いは、乱暴な別れにつながる」
  2. 動画やライブから移ってきたときに違和感を与えないよう「動」を意識したLP
  3. 継続率を高め、LTVの向上につなげることが本当のブランド支援
  4. 誰かの悩みを解決するため、もっともっと多くの人に知ってもらいたい

人も商品も「乱暴な出会いは、乱暴な別れにつながる」

前編からの続きです。

あきさん(以下 あき):a-worksさんは「集客」「獲得」を得意とする会社だと伺ってきましたが、クリエイティブにおいてキツい表現や露骨な表現をつかわないのは、お客さまの解像度を高めたうえで「その人に伝わるクリエイティブ」を発信する方がLTVが上がる確信があるからでしょうか。

百々:はい、おっしゃるとおりです。個人的には、「胸を張って商品を届けたい」の一言に尽きるかなと思っています。過激な表現で訴求を強くしてピンポイントで悩みを刺しに行く広告は、確かに費用対効果よく獲得できるかもしれませんが、お客さまが優良誤認される表現になってしまっているケースも少なくありません。それで購入に至ったとしても、実際の使い心地が期待していたほどではなければ当然続かない。だからといってテクニカルに解約を防ぐ施策でLTVを伸ばすビジネス構造は好きではないし、本質的な商売ではないと思っています。

シンプルに、ちゃんと理解していただいたうえで買ってもらって続く方がいいに決まっています。売り手側の立場としても、「あの商品めっちゃ売れてるけどんな広告手法でやってるの?」って聞かれたときに、堂々と答えられない仕事はしたくないなと。

まさよ:基本姿勢は、「人からされて嫌なことはしない」ですね。それに「乱暴な出会いは、乱暴な別れにつながる」と思っているので。

あき:それ、気になります。詳しく伺ってもいいですか。

まさよ:商品も、人も全部同じだと思っていて。例えば、「価格が安い」という理由のみで購入されたお客さまの場合、もっと安くて条件のいい商品を見つけたらラッシュリッチを使い続ける理由がなくなってしまいます。「この人は◯◯をしてくれる」という理由でお付き合いが始まった場合、もっといい条件の人が現れたら簡単に乗り換えられてしまうのと同じ原理です。

ラッシュリッチに出会ったときに、「設計のコンセプトが好き」とか「ロート製薬さんの考え方が好き」とか「自分の考えやポリシーと一致する」といったポジティブな印象をきっかけに理解・納得をしたうえで「欲しいな」と思ってもらうことがその後の継続率を左右します。これは、10年以上この仕事に向き合うなかで学んだことです。そうして積み重ねてきた経験を軸に、キービジュアルはもちろん特にLPは「商品とお客さまの出会いの場」として機能させることを念頭に置いて制作しています。商品やメーカーの考え方と、お客さまの価値観をすり合わせる場所というか。

あき:たしかに。弊社のスタンスとしてもイチ担当者としても、お客さまと乱暴なお付き合いはしたくないなって強く思います。

取材はロート製薬さまのオフィスをお借りしました。ありがとうございました!

動画やライブから移ってきたときに違和感を与えないよう「動」を意識したLP

ひらめさん(以下 ひらめ):LPといえば、4月に刷新していただいた新しいLPを公開後、すぐに高い効果が出て本当に驚きました。速報値ですが、旧LPと比べてCVRが1.68倍。ラッシュリッチの世界観を素敵に表現いただいていると社内でも好評です。今後のお客さまの反応にも期待しています。

あき:新しいLPはどんなところにポイントを置いて制作されたんですか?

旧LPと比べて1.6倍のCVRを記録した新LP。動画投稿やライブ配信から流入した消費者に違和感を与えないよう、「動き」を効果的に使ったデザインに

百々:まずは当然ですがCVRの向上です。そのために、ライブ配信やSNS投稿をきっかけに流入する人への訴求をさらに高められるような見せ方を意識しました。

まさよ:SEOメディアからの流入をメインとしていた従来のLPは、静的なデザインが中心でした。けれど今回はSNS投稿の動画やライブ配信を経由してLPを訪問する流れを想定しているので、訪問者がスムーズにLPの世界観に移行してもらえるよう、「動」の要素を意識しています。動いているものを見たすぐあとに遷移してきたときに、完全に「静」のページだと違和感を感じるからです。

本LPを開いた瞬間はキャッチコピーの「まつ毛印象、変わる。」が非表示の状態ですが、そこからタイプライターのようにコピーが表示される動きを採用しています。横書きの日本語は左から右に読むため、ギミックの動きに引っ張られてモデルさんの目元と「すっぴんに、目ヂカラを」のコピーが自然と目に飛び込んでくるよう設計しました。文字の表示速度は遅すぎても早すぎてもダメ。何度も調整を繰り返して現在のスピードに決定しました。

プラス、SNSのノリやテンションも意識しています。いい意味でのライトさやキラキラ感、憧れ感ですね。あとは、「パッケージの世界観が活きるデザイン」「ロート製薬の信頼感」も、重視したポイントです。購入者アンケートにおいても「ロート製薬の商品だから」が購入理由の1位だという裏付けがあるので、その訴求をさらに強められるよう、LPを開いたときにまず目に入る左上の特等席に「ロート製薬のまつ毛美容液」のサブコピーを配置しています。

ロート製薬のまつげ美容液「ラッシュリッチ」。パッケージの世界観もLPに落とし込んだ

まさよ:もう少しテクニカルな部分の補足をすると、コピーに関しては、ブランド側の言いたいことをお客さま視点で言う。ただそのままではなくて、刺さる表現、伝わる表現に翻訳しつつシンプルな言葉に仕立てることが大切です。

次に構成ですね。何をどの順番で言うかを決めます。原稿が固まったらデザイナーさんに依頼して一緒に仕上げていくわけですが、完成に至るまでにはデザイナーさんとの議論や細かい調整のやり取りが実はたくさんありまして(笑)。「伝わるべきことが、適切な言葉とビジュアルで、伝わるべき相手に伝わる」を叶えるLPになるように、デザイナーさんとは常に、目的とマーケティング視点を含めた原稿の制作意図を共有しながら進めています。

ひらめ弊社はかなり慎重に薬機ルールを守っていますが、それらをうまくクリアしながら最適な表現を一緒に模索いただいてありがとうございます。

まさよ:長年セールスクリエイティブに携わってきましたが、お客さま自身が大切にしている価値観とか、この商品を買う理由を、ご本人さまも気づいていないんだろうな、と思うことはよくあって。いわゆる「インサイト」と呼ばれるものをきちんと押さえることができたら、「効果がすごい!」「買わないと損する!」なんて言わなくても売れるんですよね。

だから、売れるクリエイティブというのは、シナリオの組み立て方と、それを自然に訴えかけられる見せ方がとても重要です。そのため、薬機法ギリギリの表現で限界まで踏み込まなくても大丈夫なんです、本当は。

もちろん商品の説明は必要な要素ですけど、お客さまは「商品」を買っているわけじゃなくて、商品機能を通して得られる「自分の明るい未来」「ポジティブな感情」を買っています。商品機能の説明はあくまでも、ご本人のインサイトまでをつなぐ「はしご」でしかないと考えています。

「乱暴な出会い」の説明でも申し上げたように、この「はしご」の部分である「効果」をどれだけインパクト強く言ったところで、購入者が「はしごを外された」=「期待値に届かなかった」と感じてしまったら、そこで終わりです。この商品を使ったらお客さまがどうポジティブに変化するかを上手く伝えられたら、効果効能をアピールする部分はいたずらに目立たせる必要はないんですね。

ラッシュリッチではブランド立ち上げから携わらせていただいたおかげでブランドの世界観と届け方にブレがなく、一つひとつのクリエイティブがとても高く機能していると感じます。

a-worksのアレンジメントマーケティングチームのリーダーを務める百々(左)と、10年以上セールスクリエイティブに携わってきたコピーライターまさよ(右)

れなさん(以下 れな):ラッシュリッチのキービジュアルが完成するまでには本当に紆余曲折あったのですが、そのときにまさよさんとたくさんお話をさせていただいたことが今の糧になっていると感じています。

このブランドの軸足をどこに置くか、どこを目的にするか、といった基本的な部分のすり合わせにも何度もお付き合いいただきましたし、それを社内に展開して同意を得るために、他部署の方へ伝えるためのテクニックや工夫もたくさん教えていただきました。

また、私はプロダクト視点で考えがちだったんですけど、先ほどのまさよさんの説明にもあったように、それをちゃんとセールスに繋げるっていうところに落とし込んでくれたこと、意見が合わなかったときにも根気強く説明してくださったことが、すごく勉強になりましたし楽しかったです。

まさよ:ありがとうございます。私もすごく楽しい時間でした。

継続率を高め、LTVの向上につなげることが本当のブランド支援

百々:インサイトを狙いましょうという取り組みは珍しいものではありませんが、それを実際に当てるのは本当に難しいことだと感じています。

新規獲得の効率効果はもちろん重要な指針であるものの、それと同等にa-worksが重視しているのはLTV※です。1回だけ購入する人ばかりを増やすのではなく、「また使いたい」と思ってくれる人を増やすこと。引き上げ率・継続率を向上させることこそが、本当の意味でブランドを支援することだと思っているからです。

実際、これまでの施策でも「『なりたい姿』、すなわち消費者の”To-be”を描くことが継続率のアップにつながる」との結果が出ていますし、消費者の「どうなりたいか」を想起させるクリエイティブは、a-worksが他社に負けない点であると自負しています。

※LTV…顧客生涯価値。一人の顧客が企業の売上に貢献する価値の予測

参考記事:サンスター様と考える、CVRとLTVが共に伸びるクリエイティブの在り方【対談】

百々:もちろん、クリエイティブ制作のみならず広告運用においてもLTVを意識しています。方向性や種類の異なる広告をそれぞれのグループにわけて検証を行う手法は珍しいものではありませんが、a-worksでは、CPAの安さだけでなく、F2、F3、F4※の継続率までを見据えて「どのグループの広告に集中するべきか」といった判断を行っています。

※購入頻度。F2は顧客が2回目の購入をしたことを指し、F3は3回目購入、F4は4回目購入

ひらめオーガニック検索の増減についても、毎日丁寧に見ていただいていますよね。

百々:ウェブ広告をメインとする代理店では、運用している広告の数字のみを追いかけているイメージが強いかもしれません。ブランド成長の一端を担う集客施策においては、広告の成果だけでなくオーガニック検索の数字も併せて追う必要があります。検索数が伸びた原因はライブ配信なのか、SNS施策なのか、プッシュ型の広告配信によるものなのか。日々検証を重ね、微調整を繰り返しながら、すべての施策の確度を高めていくことが重要だと捉えています。

オーガニック検索が増えればCPAを抑えることができますし、浮いた予算をさらなるブランド成長につながるほかの施策に回すことができる。全体最適かつ中長期的な視点を持った提案ができてこそ、a-worksに任せていただける価値を提供できると考えています。

広告グループによる比較(例)

広告CPAF2残存率F3残存率F4残存率
Aグループ¥7,00065%45%35%
Bグループ¥8,50075%60%50%
Cグループ¥7,20080%70%60%
CPAが安いAグループの広告に配信を集中させることが一般的だが、a-worksではF2以降の継続率も重視しているため、「Cグループの広告に注力すべき」との意思決定をすることが多い【参考記事】なぜa-worksが選ばれるのか?会社の強みをシャチョウが解説!キーワードは「F2転換」と「クリエイティブ」

百々:ブランド全体の数字を見比べながら次の一手を考えることができているのは、ロートさんからこまめに情報を共有いただけているからこそ。とてもありがたいです。

ひらめ在庫予想を見据えた広告戦略など、全般的に広く見ていただけて本当に助かっています。

百々:そう言っていただけるとたくさんの計算表を作った甲斐があります(笑)。

今後は、記事やバナーについても、新LPを起点にアップデートを予定しています。Meta広告のアカウンティングが見直されるタイミングが近づいていることもあり、ラッシュリッチを支持してくれているターゲット層をさらに広げることで、顧客層をより広げられるよう尽力したいと思っています。

ちょうど先日、開発の方にも取材させていただき新しい記事の準備をしていますので、表現方法などをさらに工夫して、届けたいターゲット層へとチューニングをしていく予定です。

ひらめ工場にまで広告制作の方が足を運んでくれる機会はあまりないので、生産現場のメンバーがとても喜んでいました。仕事だから聞きにきたという感じではなく、本当に商品そのものに興味を持っていただいているんだなと感じましたし、お客さまに伝わる表現について真摯に考えている姿も印象的でした。取材スタッフさんたちとの会話を通じて「自分たちの作っているものを楽しみにしてくれている人がいる」と改めて気づくことができ、生産現場のメンバーのモチベーションもすごく上がったと聞いています。

百々:それはすごくうれしいですね!

誰かの悩みを解決するため、もっともっと多くの人に知ってもらいたい

あき:今日は改めてラッシュリッチのクリエイティブについて詳しくお伺いできてよかったです。社内で「商品がすごく魅力的に伝わっているね」と言われることもありますし、クリエイティブを起点にお客さまを増やしていることを聞きつけて「すごく好調なんでしょ」と声をかけていただくことも。最近では、有名な美容系YouTubeの方から紹介させてほしいと打診があったり、美容雑誌からも問い合わせがあったと聞いています。

れな:美容家さんやプレスの方に紹介していただくときには「SNSで話題の!」といった切り口が多いようで、SNS施策の影響力の大きさを感じています。

百々:きちんとPRができていればおのずとメディアが動き出してくれ、さらに認知が広がる、という循環が生まれます。ラッシュリッチに関してはこの流れが今後さらに加速していくでしょうし、非常に楽しみですね。

最後に、ラッシュリッチについて、みなさんが思い描いている展望などはありますでしょうか。

ひらめまつ毛ケアの定番商品になりたいですね。まつ毛をケアしたいと思ったときまず最初に思い浮かぶような、ラッシュリッチだったら間違いないね、ずっと使い続けたいねと言っていただけるようなブランドになったらいいなと思っています。

れな:ブランドパーパスでもうたっている「悩みを不安なく健康的に解消できる」商品であることを体現すべく、まつ毛について悩みを感じたときに安心して手に取っていただける商材になっていきたいですね。

ロート製薬のあきさん(左)とひらめさん(右)。長時間の取材におつきあいいただきありがとうございました!

あき:その通りかなと思います。いい商品だからこそ少しでも多くの方に届けていきたいし、誰かの悩みを解消してあげたいなと思っているので、a-worksさん、ULTRA SOCIALさん、ロート製薬の3社で連携しながら、ラッシュリッチという商品をより多くの人に知ってもらえたらと思っています。百々さんはどうですか?

百々:事業活動という意味合いにおいてはやはり、まつ毛美容液ジャンルにおけるトップシェアを狙っていきたいと思っています。今はデジタル領域のみの展開ですが、チャネルを広げて、リテールでも海外でも手に取っていただける商品に育ってくれたらうれしいです。

もちろん、まずは現在掲げている年商のクリアが第一目標。タイミングを見極めながら、張るときは張る、引くときは引きながら、しっかりと伸ばしていきます。今後ともよろしくお願いします。


ロート製薬のみなさま、長時間にわたる取材にご協力いただきありがとうございました!これまでの振り返りを行うことができ、非常に有意義な時間となりました。また、未経験にもかかわらず「ブランド立ち上げ」のパートナーとして選んでいただいたこと、改めて感謝申し上げます。

本プロジェクトを通じてますますパワーアップしたa-works。これからも「意志あるブランド」を本気で支援してまいります!


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