前半では、抖音(Douyin)を運営するBytedanceにてさまざまな事業を手掛けてきた高橋さんを迎え、中国のマーケット事情や抖音のアルゴリズムについて話を伺ってきました。
中国の短尺動画SNS「抖音」のEC流通額は18兆円!購買行動を変えた抖音の技術とは【越境EC支援 前編】
後半では、a-worksが手掛ける新事業「越境EC支援」について深堀りしていきます!
ULTRA SOCIAL株式会社 代表取締役 高橋亮太さんプロフィール
横浜国立大学卒業後、シャープ株式会社に就職。マーケティング会社で約6年データマーケティングに携わったのち、2018年より日本でTikTokを運営するBytedanceに入社。中国本土への広告配信事業やEC立ち上げを経て、2022年6月にULTRA SOCIAL株式会社を設立。
抖音ECを成功に導くためには、これまでとまったく異なるアプローチが必要
野山:a-worksでは数年前から「次は越境にチャレンジしたい」と言い続けてきたんですが、高橋さんの力添えもあって、2022年からやっと越境EC支援の取り組みをスタートすることができました。
四角:現在は主に、国内のEC支援でもお世話になっているクライアントの公式アカウントの運用支援をおこなっています。ライブ配信のデータを解析して次の施策につなげたり、イベントに合わせて企画を提案したり。
野山:主に四角と松本の2人がメインで現場を仕切ってくれていますが、本当に大変そうだなと思って見ています(笑)
高橋さん(以下 高橋):どんな点に難しさを感じていますか?
松本:クライアント企業とa-worksの間に中国の代理店が入っているのですが、そことのやり取りがまず大変です。ミーティングは通訳を介してのコミュニケーションが多いため、細かなニュアンスを互いに伝えるのが難しいと感じています。
四角:あとはやはり日本マーケットとは構造がまったく違うので、日本側の担当者に「なぜそれが必要なのか」を理解していただくまでが大変だなと。
高橋:めちゃくちゃよくわかります。クライアント企業に抖音の仕組みそのものを理解していただかないと、スムーズに進めるのがなかなか難しいですよね。
また、中国側の代理店を見ていると、抖音ECの運用にそこまで積極的でない会社が多いと感じています。というのも、これまでのECサイトとはまったく違う考え方やアプローチが必要なので、手間も時間もかかるんですよね。だからあまりやりたくないというのが本音なのかもしれません。
野山:とにかくめんどくさいってことですね(笑)
高橋:そのとおりです(笑)
抖音をはじめ中国のECはライブコマースが主流になっていることはお伝えしたとおりですが、届けるべきユーザーの目に留まるためには、毎日のライブ配信が必須です。「情報から人を探しに行く」という抖音のアルゴリズムに乗せるためには、毎日たくさんライブをしてデータを集めなければ土俵に立つことができません。そのうえで、集まったデータをもとに次の手をどんどん出していかないといけない。うまくいっている企業は、トライアンドエラーのスピード感が尋常じゃないですね。
野山:先程の話にもあったように、見るべきデータの量が膨大なので、適切な施策を導き出すのも大変ですよね。これを例えば、クライアント企業がみずから解析するのは難易度が高すぎるなと。手前味噌ですが、四角と松本はよくやっているなと思います。
四角:越境EC支援に取り組み始めたばかりの頃の感想は「わからなすぎておもしろい」でしたね(笑)。やるべきことが見えてきた最近は、各所との連携をいかにスムーズにおこなえるか、という点が重要だと感じています。
高橋:関係者が多く海外とのやり取りも発生するので、どうしてもそこがネックになってきますよね。いずれにせよクライアント企業を納得させることがすべての近道だと思うので、データ解析をもとに「この施策がなぜ必要なのか」を理解してもらうよう説明し続ける根性が必要だと思います。もしよろしければ僕もお手伝いしますよ!
松本:それは心強いです!
高橋:それにしても、日本国内でこんなに中国ECのマーケットに真剣に取り組んでいる会社ってほかにないと思います。管理システムひとつにしても、この勢いで使いこなせるようになれば四角さんも松本さんも越境EC支援の先駆者になれるんじゃないでしょうか。
野山:近い将来、2人で抖音ECのセミナーを開いてもらおう(笑)
四角:できるかな…(笑)。でもやっぱりまずは中国語を勉強しないとダメですね。今は、管理画面などに出てくるキーワードを「漢字の形」で覚えてるんですが、やはりちゃんと言語として理解できるようにならなければいけないなと。
松本:中国スタッフとのミーティングでも、めっちゃ説明したことが通訳さんを介すとほんの一・二文になってて、「本当にちゃんと訳してくれてます!?」って不安になっています(苦笑)
高橋:そうですね。今後を考えるとやはり中国語は習得しておいて損はないと思います。ちなみに、複数の言語を交えたミーティングなら、Bytedanceが開発した「Lark」というオフィスツールがオススメですよ。Larkのオンラインミーティング機能を使えばリアルタイムで翻訳・字幕化してくれますし、そのまま議事録として保存することが可能です。
四角:(実際の画面を見ながら)ただ翻訳するだけじゃなくて、前後の会話をふまえて細かなニュアンスまで拾ってくれるんですね!Larkはチャットしか利用していなかったですけど、次回からぜひ使ってみます。
松本:中国語がペラペラになるまではこれですね。四角さん、どっちが早く中国語上達するか競争しましょう(笑)
「手がかかりすぎてやってられない」領域だからこそ、a-worksが取り組む価値がある
野山:僕が個人的に思っているのは、中国マーケットに挑戦したいと口にする日本企業は多いけれど、本気でコミットできる会社はそんなに多くないな、ということ。姿勢や体制もそうですが、まずは投下できる予算感に大きな差があると感じています。
高橋:おっしゃるとおりです。みんなね、本気でやらないんですよ。御社のクライアントのように、全体を把握するためにとりあえず1億2億突っ込んでみますっていう会社じゃないと、中国マーケットでは勝負できません。
野山:「300万円でとりあえず試してみたい」と言われても、そんな金額では本当に意味がない世界ですよね。
高橋:人口1億人の日本で300万円の予算だと考えるならば、中国人口は14億人ですよ。単純に、トライアルの規模も14倍必要なわけです。
野山:さらには「なんで300万円なんだ」と聞くと、なにか確たる理由があって決めているわけではぜんぜんなくて、「その程度の金額なら稟議が上げやすいから」と返ってくる(笑)
高橋:中国マーケットで勝負して、100億円200億円というトップラインを目指そうと言っているのに「まずはテストしたい」と数百万円を提示されても「一体何のテストをするんですか」という話になってしまうんですよね。
野山:中国に進出して撤退した同業他社をいろいろ見てきましたけど、そうした規模感や必要性を説明できるほどに向き合うためには、大変なことが多すぎるんですよね。越境EC支援は他社から見たら「手がかかりすぎてやってられない」という領域だと思うんですが、あえてそこに挑戦してこそa-worksらしさかなと思っています(笑)
四角: 新しい領域に挑戦できている楽しさもありますし、扱える金額の規模感もマーケターとして夢があると思います。それに、単純におもしろいんですよね。休みの日もずっと管理画面を見ては、次はどんな手が必要なんだろうと考え続けています。
野山:僕はこれを「変態運用」と呼んでいます(笑) 仕事として割り切ることももちろん大切ですが、のめり込むほどの情熱がないと成し得ないことって絶対にあるので。
松本:高橋さんから、僕らへのアドバイスがあればぜひ知りたいです。
高橋:そうですね。まずは中国現地に行ってみてほしいです。ニュースや数字で中国の勢いを感じる場面は多々あると思うんですけど、現地を訪れてみると予想のはるか上の現実が広がっていることに驚くはず。誇張ではなく、毎日のようにスタートアップが生まれていますし、テクノロジーの進化もすごい。アイデアが生まれてからカタチになるまでのスピード感に圧倒されると思います。
これはもう3年前のエピソードなんですが、当時、上海のエンジニアと話していたら「最近はアップルウォッチを時計として使っているんだ」と言われたんです。上海ではほとんどの店で顔認証での決済がおこなえるので、レジでスマホやアップルウォッチを提示する必要すらないと。彼らにとってアップルウォッチは「時間を確認するデバイス」とのことでした(笑)最近は中国へ足を運べていないのですが、あれからどう進化しているのか最新事情が気になりますね。
松本:うわーめちゃくちゃ興味があります。すぐにでも行きたいです。
野山:行きましょう。高橋さんも一緒にぜひ。
高橋:ご一緒させていただけるなら喜んで!
あとは、抖音ECを自社で手掛けてみるのはどうでしょうか。実体に伴った知見を得ることができるので提案の精度が上がりますし、説得力も増すと思います。
四角:確かにそれはおもしろそうですね!
野山:いいですね!ちょうどよさそうな商材があるので、可能性を探ってみようと思います。
高橋さま、貴重なお時間をいただきありがとうございました!
これからもa-worksでは「中小企業だからこそできるニッチなソリューション」にこだわり、さまざまなクライアント企業さまに適切な支援をお届けできるよう尽力してまいります。
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