a-worksで法務・総務・労務など経理以外の管理部全般を担当しているビジネスマネジメントグループのゆーです。普段は東京支社で働いています。
ロースクール卒業後、シームレスに企業法務を数社経験し、2019年、中途でa-worksに入社しました。前職のゲーム制作会社では本業の法務に加えてバックオフィス全般の他、シナリオを書いたりスクリプトを打ったり音楽やボイスのディレクションやイラストの制作進行など、いわゆる「ゲーム会社らしい」業務に携わり、なかなかに器用な法務に仕上がっています。
趣味は「世界二大サ活」と誰もが言う、サッカー活動(出身地であるJリーグ金沢のサポーターです)と、サウナ活動です。前々回、本ブログで高橋が書いていた「僕も夏ごろには休暇をいただきたくて…」という発言は私のもので、理由はサッカーの遠征でした。ただ、いずれもコロナウィルスの影響があり、現在は趣味が八方塞がりの状態です。
その憎きウィルスへの鬱憤を晴らすべく、本日は弊社におけるリモートワークの制度化のきっかけから、実際に制度運用を行ってみてのことを書きたいと思います。
リモートワーク導入の経緯
a-worksの働き方とリモートワーク
a-worksには7つの経営方針があります。この根底にある価値観は「人生を豊かに」という余裕のことであって、従業員みんながその時間的・経済的な余裕を持つために自主自律した働き方を追究しています。自由な働き方もその現れで、フレックス制度が採用されていることも「自分の人生の有限時間をどうマネジメントするか」という意識形成の大きな要因でした。
そのような中にあって、リモートワーク制度の導入はもっと早くに行われていても不思議ではありませんでした。弊社はインターネットにおけるサービスが業務の中心であり、そこだけを取れば、先の弊社が実践する「自由な働き方」との相性も良いでしょう。
当時、リモートワークを導入するにあたっては、例えば以下のような懸念も多く出てきました。
- 対面以外でのコミュニケーションの不安
- 各人業務が直接見えない
- 契約書の押印対応
- 電話対応
- 郵便物・送付物対応
結論、やってしまえばどうにでもなることではあったのですが、積極的に導入する特段の理由もない中で、知見のない環境に変化するには勇気ある抜本的な決断が必要であることを痛感しました。
1日で導入の意思決定まで
a-worksでは、会社全体の方針などを決める際に、誰もが参加・意見可能な“ガバナンスミーティング”という会議を実施しています。
会社のことはみんなで決める、“民主主義型自主経営”という経営方針に基づいています。
そんな会議を3月にも実施したのですが、当日に社員の声をきっかけとして、急遽コロナ対策について議論するテーマが追加されました。
感染拡大を防止するために極力在宅で仕事ができた方がいいんじゃないか、ましてや社員の誰かが罹患してしまうようなことは絶対に避けたい…等、その日はほぼ全社員が参加して議論を行いました。結果、全員が合意したうえで、速やかにフルリモート体制に移ることが決まりました。
コロナウィルスによる緊急事態宣言
ガバナンスミーティングでの決議後、4月3日に弊社代表の野山からの指示を受け、翌週明けの4月6日より可及的速やかに正式なリモートワーク制度を管理部で作成していくことになりました。
この時点でリモートワーク制度のガイドラインの作成期限を4月10日とし、4月13日より成功するという目標を立てました。
本来であれば数ヶ月の工数と思われるものを、普段の業務をクオリティを落とさずにこなした上でこれをやるわけですから、このスケジュールを立てた段階で我ながらかなり変な笑い声が出ていました。
普段の業務を切り上げたあと、連日夜中の3時・4時・5時まで作業を助けてくれた上長の高田とは、コロナウィルス収束後に祝杯を上げる予定でいます。
また、5営業日でノウハウが一切ない全社プロジェクトを実行するため、従業員と、社外、つまり取引先との合意をきちんと得られるかが一番の懸念でした。
全社全員がこの未曾有の事態に対して真摯に構え、社外とも足並みを揃えて臨むことが不可欠だと考えられたからです。例え1名でも社内から罹患者が出てしまえば、プロジェクトとしては失敗でした。
ただし、その懸念は、4月7日に政府から弊社事業所のある大阪・東京・福岡すべてを含む地域での緊急事態宣言が出されたことにより払拭されました。これは、「緊急事態に対応する措置を取らなければいけない」という理解を得るために非常に説得力のあるフラグでした。
「a-worksのメンバーはサボりません。」信頼をベースにガイドラインを作成
基本方針
私からするとリモートワークというのはメリットのほうが大きいものに映ります。
- 通勤時間をなくすことによる時間的・精神的な余裕(日本一通勤が過酷であろう東京勤務なものですから、それはもう余計に)
- 業務における裁量をより広く持つことができる
- 自宅という、他人に気を使うことなく自分に最適化されていて落ち着ける環境(業務が捗るのであれば音楽だってかけ放題)
- 集中した業務は充足感も高く、空き時間の有効活用なども柔軟に可能
といった具合です。
一方で、リモートワークのマイナス面を論うなら、「サボりやすく」、「だらだらと働き続けやすく」、「精神的に落ちやすい」のが特徴で、少なくともこれらをポジティブに避けることができれば、働きやすいリモートワークになるのではないかと思います。
ですから、会社として従業員をファシリテートすること、意識の統一などが必要となります。そのためのガイドラインを策定することにしました。
ガイドラインに込められた想い
ガイドラインを設計・作成するにあたり、まず考慮しなければいけなかったのは「会社の色を壊さないこと」、つまり「なるべく普段と同様に業務をしてもらえること」でした。100%平時と同じように業務をすることは現実的に不可能ですが、そのギャップをなるべく抑えること。
そしてもう一つ、「万が一、今後これまでの業務形態に戻らない場合を想定すること」も重要でした。
コロナウィルス禍は、いつかは収まるものだとは思いつつも、元通りにはならないかもしれない(消極的理由)し、またはリモートワークのほうが働きやすい、メリットが多いのであれば、継続していくことも考えられる(積極的理由)ということです。
長く続けてもできる限りストレスの少ない設計にすること=①「受け入れやすい変化にする」こと、また、新しい働き方に馴染みやすくし、意識の転換のしやすさからストレスを少なくすること=②「変化を受け入れやすくする」ことの2点を柱としました。
その上で、リモートワークを行う上で一番の約束事としては、
- お客さんに対してのアウトプットは決して下げないこと
- そのアウトプットのための業務と個人の豊かさ(特に健康)とのバランス
があります。
在宅で仕事をした経験がない大半の従業員にとって、誰とも直接接することがない自宅での仕事は、言ってしまえば会社オフィスよりも「サボりやすい」環境です。
また、オンオフの切り替えが難しいということは同時に「仕事をしすぎてしまう」環境でもあります。そのため肉体的な健康(コロナウィルスに罹患しないこと、普段どおりの規則正しい生活)と、精神的な健康(コミュニケーションの担保)が解決すべき課題でした。
下記が、先日公開した実際のガイドライン(を公開のため体裁を整えたもの)です。全社にとってなるべく良いものにできるようにと、上長の高田が連日徹夜で手伝ってくれた私たちの集大成です(笑)。
このスライドの第1章には会社としての想いが詰まっています。
「普段どおりにやること」「健全と健康にコミットすること」への言及が軸になっています。
そのための要素としては、「信頼」と「ワークフローの確認」があります。それを補強する形で使用するツールなどを急いで準備していきました。
また、リモートワーク制度を導入するに当たり大半の会社の管理部が頭を悩ませることに「従業員の監視」は必ず挙げられると思います。
ここについては、「信頼」で乗り切ることにしました。監視コストほど生産性がないものはなく、アウトプットの質と普段のコミュニケーションで担保すればよいと考えました。
「a-worksのメンバーはサボりません。」という一文に込めた決意は大きなものです。
少し話がそれますが、弊社代表の野山がよく言うフレーズに、「誠実な商売」というものがあります。「ナニワのアキンド」らしくて私はとても好きな表現なのですが、これはお天道様にきちんと顔向けできる仕事をしましょう、そうすることで豊かさに繋がっていくよ、という根本的な考え方です。
そんな大阪らしい弊社ですから、仕事というものは必ずしも時間や過程で計るものではなく、みんなが誰に対しても胸を晴れる仕事をしているはずなのだから、だからこそ会社もそこを信頼して、出てきた結果を評価するよという決意です。この決意さえできれば、きっとどんな企業であっても残るリモートワークの障害はパワープレイで解決できる気がします。
また、結果論ですが、常日頃から社内でそのような意識を形成しておくことの重要さはこの時に痛感しました。
実際にリモートワークを導入
このようにして整えた制度について、4月10日金曜日の夕方に全社通知し、同時に短時間ではありますが全社集会の形で管理部リーダーから口頭でのイントロダクションを行いました。
週明け4月13日月曜日から在宅稼働できる最低限の準備が整い、実際には13日より準備ができた従業員から在宅稼働を開始しました。
なお、大急ぎで作成したガイドラインだけではどうしてもカバーできていない部分があるため、ガイドライン内に知見を蓄積できる部分を作り、随時Q&Aを追加することで対応していっています。
例えばオンラインのミーティングについては、Discordへの常駐をはじめとして、ZOOM、whereby、Meet Now、Google Meet、Spatial Chat、Remoといったツールを試行錯誤しながら活用しています。
月末に全従業員が参加する恒例の納会ではZOOMを、また、先日はZOOMに加えてSpatial Chatでのいわゆる「リモート飲み会」を任意参加で開催したりもしました。
上手くいったことと今後について
上手くいったこと
手前味噌な部分が多いですが、今回のプロジェクトで上手くいったことは、
- 兎にも角にも5営業日で起案から施行までを行ったこと
- 会社が常々示している「豊かさ」を具体化した一つの形となったこと
- 管理部内連携がスムーズだったこと(普段からのフローやコミュニケーションの醸成)
- 社内にリモートワークが必要だと考えられる柔軟さがあったこと
- リモートワークであってもユーモアや余裕が過度に失われていないこと
- そもそも会社役員がリモートワークという選択肢を持てていたこと
といったことかと思います。平均年齢が20代である若い会社ですので、その若さの文化によるところは大きかったかと思います。
反省点および今後の課題
また、反省点もいくつもあります。
- 吟味の足りていない見切り発車が多いこと
- 義務とすべきことを権利にとどめてしまったこと
- 現状では押印対応や郵送物対応で、数名の当事者の出勤が不可欠であること
- 完全なコンセンサスが取り切れておらず、従業員の主観に頼る余地が大きいこと(discordにて「自身を見える化する」ことの意義など)
- 社内協力体制における従業員の理解度、真摯度へのアプローチ不足(若い会社であるがゆえ、共働き家庭やお子さんが居る家庭についての想像力・シミュレーションが十分ではないこと。特に、本来保育園等は「親が家にいないから」ではなく「親が仕事と両立できないから」必要→家にいれば仕事と子育てが両立できるという思い込みがあること)
- 従業員の家庭内ネット環境の質の担保にまで配慮できなかったこと
などが代表的かなと感じています。これらを解決するための課題としても、管理部では本年度第4四半期のOKRに以下の事項を入れています。
- 従業員管理のフローの見直し
- ペーパーレス化のための計画
- 社内通信環境の改善
- 新たなコミュニケーションツールの導入設計
- 管理者向けの教育ガイドの模索
少なくともこれらを完了するまでは本プロジェクトは未完成のままであるため、管理部は達成に向けて本日も粛々と業務を行っています。
a-worksは今年で創業12年を迎えます。ただ、とても若い会社だと思います。パワフルでぐいぐい進むけれど細かいことは忘れていたりだとか、逆に既成概念やしがらみに囚われず大胆に物事を判断できたりだとか、それは一得一失で、大変にやりがいのある現場環境だと思います。
その中における管理部、私たちの役割とは、物事を盤石にして「若さの良さ」を補強することだと感じます。
恥ずかしげもなく爽やかに申し上げますと、私はリーダーシップを取るというよりは知識と機転と柔軟性を武器に戦う参謀タイプだと自負しています(好きな三国志の人物は司馬懿と郭嘉です。魏が合います)ので、「現場力」が特に重要であるここは、やりがいにおいてもピカイチです。
加えて東京支社にいるフットワークの軽さも活かし、会社の飛び道具的な役割も担っていきたいと考えています。
おわりに
総括ですが、今回のリモートワーク制度の制定にあたって終始痛感したことは「日頃の準備がいかに大切か」ということです。
「こうしていれば良かった」ということは些細なことに多かったのですが、特に「こうしておいて良かった」という事項は多く、その土壌があったからこそ、短期間で一定の形を作れたのかなと思います。
正直に言うと、管理部は地味な仕事が多いです。
お金を積極的に生むような業務は少なく、性格的にも控えめで、厳格で、規律的で、粛々と100%の仕事をこなしていくようなメンバーが揃っています(声と顔の大きさは別です)。
であるからこそ、普段から「攻める管理部」を自称し、例えば他部署との連携においても能力的に最適であればファシリテートを取るように、例えば他の会社の管理部の方たちから「良いね」と言われるように、という部内目標があります。
そして、何より、「どうすれば会社の人達がより幸せになれるか」ということを、行動理念やポイントポイントでの判断の基準に置いています。
例え非情に見えても、名を捨て実を取れるならば、最終的に全体最適であるならばという信念に基づいて、また明日も誰かを怒り、誰かの協力に感謝して、誰かの成功に心から拍手していくでしょう。
今回のリモートワーク制度についても、管理部の共闘と、全社の協力があってこそだと本心で感謝しています。これでも。ほんとに。
無いものを作り、あるものをより良く、そういったことのいち要素として本制度を残せたことは大変な勉強材料であったと、またその勉強を会社の業務としてできることを誇りに思っています。
これからも、管理部メンバーそれぞれの才能を発揮しながら、日々の業務に向き合っていきます。
おしまい