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思いを言葉にするコピーライターってどんな仕事?ーブランドコピーライター×セールスコピーライター対談

モノもサービスも情報も溢れていて、とにかく選択肢が多い時代。どんなにいいものでも、適切な情報発信を伴わなければ存在しないも同然です。

届けたい相手に見つけてもらい、さらに自社を選んでもらうためには、どんな言葉をどう伝えるかが非常に重要。

日常的に気軽に使っているのに、仕事となると難しさや不安を感じるのは、こうした言葉の役割の重さに起因するかもしれません。

そんな困難から私たちを救ってくれるのが、コピーライター!選び抜かれた言葉で、伝えたい人と受け手のコミュニケーションをつなぐ仕事です。

そんな言葉のプロがどんな風に考えて伝わる文章を生み出しているか・・・・知りたくないですか?

そこで今回は、セールスとブランディング、二つの分野で活躍するコピーライターを招いて、対談形式でお話を伺います。

今回お話を伺ったのはこの二人!

コピーライターの二人

左:a-works株式会社 コピーライター 雅代さん
コピーライター暦 5年
デジタルマーケティング会社で、ランディングページやメールマガジンなど、セールスコピーの作成に携わる。

右:株式会社parks 代表 久岡崇裕さん
コピーライター暦 12年
大阪のコピーライター事務所での7年半の勤務を経て独立後、2013年に株式会社parksを設立。
キャッチコピーの提案から、Webサイトの企画・構成、取材ライティングまで、言葉を軸に、企業ブランディングのサポートに携わる。

コピーライターってどんな仕事なんですか?

ーーコピーライターという職業は、「華やかなマス広告や有名な商品に使われるキャッチフレーズを作る人」というイメージが先行している感がありますが、実際お二人はどんなお仕事をされているんでしょうか?

久岡
Parksでは、言葉を中心にした企画・取材・コピーライティングという3本柱で、いろんな企業のお手伝いをさせてもらっています。

ここ1ヵ月だけでも、たとえば、

○東京ドームのシーズンシートのプロモーション
○金属を扱う商社さんの会社案内
○女子大学のコンセプトコピー
○輸入壁紙の専門家のブランドブック
○大型商業施設のプロモーションのコンセプト
○製薬会社の役員インタビュー
○病院の看護師募集パンフレット

・・・ほか、いくつもの案件が動いていて、業界も、一緒に動くチームも、関わり方も、多岐にわたっています。

久岡さんの1日

ーー意外とコピーを書いている時間が短い!取材や企画も久岡さんが担当されるんですね。

久岡
僕はコピーライターの本流にはいないというか、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマス媒体でキャッチコピー一本で勝負してきたような広告代理店のコピーライターさんと比べると、メインストリームからは外れていると思います。

かかわる人数がミニマムな案件が多いので、自分が考えないといけない領域が増えます。でも、だからこそ全体を見ながらコピーがかけるし、コピーを軸に構成や企画を組み立てることもできるので、芯のとおった仕事ができるのかなと考えています。

ーー雅代さんはどうでしょうか。

雅代
私は販売をサポートするセールスコピーを主に担当しています。販売・申し込みページ(LP=ランディングページ)のキャッチコピーや説明文を書いたり、商品やセミナーを販売・紹介するセールスメールの作成をしたり。

a-worksがWeb広告の会社なので、ほぼ全てインターネットの案件で、紙のお仕事はほとんどありません。

セールスコピーライター雅代さんの一日

ーーそれぞれの分野でどんなところにやりがいを感じますか?

雅代
「言葉で人の心を動かし、行動を変える」と「ビジネスマンとして経済を動かす」を同時に実現し、かつリアルタイムに効果を把握/実感できるところがセールスコピーの魅力かなぁと思っています。

書きっぱなしで終わらなくて、自分が作ったものは最後まで責任が持てる。セールスコピーは売れないとすぐ差し替え、書いた原稿が無価値と判断されるのでシビアですけど。

だからこそやりがいあるんじゃないかなと思います。

久岡
セールスコピーは仕事の成果が数値として出る。やはり、これがブランドコピーと決定的に違いますね。

僕は企業やブランドのメッセージを書かせていただくことが増えてきたのですが、そのコピーの価値を金額に換算するのはちょっと難しいと思っています。

雅代
でも、ブランドコピーの、売れる/売れないに関係なく、純粋に依頼主の思いを言語化することに集中できるところは、うらやましいなぁと思います。

久岡
僕は逆に、セールスコピーのように効果測定ができない分、どこにモチベーションを置こうかと悩んでいた時期がありました。

そんなとき、取材して原稿を書かせてもらった方からお礼の手紙をもらったんです。めちゃくちゃ喜んでくれていて、「これまでの自分たちのやってきたことをこんな風に書いてもらって、感動しました」って。

それを読んだときに、先の先って見えないから、この仕事に直接関わった人にまず喜んでもらおうってモチベーションができたというか。

目の前の人に「うわ、めっちゃいい!」とか感動レベルまで喜んでもらうっていうことを意識する。ここでこれだけ一人に感動してもらえたら、その先もどこかで感動してもらえるだろう、という考え方で今はやってますね。

コピーライターの本質は相手の思いを形にすること

ーーコピーライターといっても、ブランディングとセールスでやっていることが全然違うわけですが、変わらないコピーライターという仕事の本質とは何でしょうか?

久岡
だれもが人生何回かは「おお、めっちゃいいこと言うやん」と感心されるようなことを言うと思うんですけど、それをコンスタントに出すというか。相手の思いを受け取って「そうそう、これが言いたかった」を形にするということじゃないでしょうか。

コピーライターが呼ばれるときって、コンセプトも煮詰まりきってない、みんながモヤモヤした状態が多いけど、「こうですか」と自分が発した言葉がきっかけで一気に道が見えるときなんかは爽快ですよね。

久岡さん

雅代
そのとおりだと思います。「読み手や受け手の中でモヤモヤしてる形になっていないものに、一番ふさわしい言葉で形を与える」みたいなところなのかなぁと。本人も意識していないような、本当に言いたいことをホイっと釣り上げるような感じ。

言葉って日常にあふれてるからこそ、本当に琴線に触れるようなものを選別するのが難しいんだと思います。

ーー自己表現ではなく、何か伝えたいことがある人から依頼がきてスタートする仕事ですもんね。

久岡
コピーライターは完全にチームプレーですね。書くときは一人ですけれど、絶対に自分の言葉だけで仕事が世に出ることはないんです。依頼主やデザイナーさんが必ずいて、何か目的があって頼まれて、お金もいただくことですから。

雅代
一部ですもんね、私たちの仕事は。
久岡さんと私は作ったものの使われ方が違うだけで、仕事としてやってることはそんなに変わらないと思います。

久岡
そうやって、仕事を通じていろんなブランドの想い、いろんな事業のアイデア、いろんな人の生き方にふれられることが、コピーライターという仕事の大きな魅力だとも思っています。

いろんな業界の人に、取材をしたり、仕事でご一緒してきたので、ひとつの単語でも、パーンと出てくるイメージが本当に多様になりました。

「優しさ」って一口に言っても、表面的な優しさだけじゃなくていろんな優しさがある、みたいな。たとえば、看護師さんから死ぬ前の患者さんとのやりとりの話を聞いたら、いろんな優しさの形があるってわかるじゃないですか。

雅代
すごくわかります・・・!

こういう仕事をしていなかったら、調べなかったであろうもの・こと、会わなかったであろう人・場面とかのことを調べたり考えたりする機会がたくさんあるので、「こんなことあるんだ!」っていう新しい情報がどんどん入ってくるんです。

それが結果的に、コピーライターとしての引き出しを増やすことにも繋がっていくんですよね。

コピーライターになるには、とにかくチャンスに飛び込むこと

ーーコピーを書くって完全に「創造」する作業なんだと思っていましたが、人とのつながりや経験が土台にあるんですね。そんなコピーライターとして必要な資質とはなんでしょうか?

久岡
知的好奇心。一文字の言葉を大切にできること。ときには、一を聞いて十を妄想すること。「これってつまり、こういうこと?」と勘所を押さえる力。やるからには、この仕事に自分の爪痕を残したい、という気持ち、ですね。

その実力をつけるために、たくさん本を読んで、たくさん人と会って、引き出しを蓄えていくことが必要です。そして当然書くことですね。書いたものを、誰かに読んでもらう経験も大事です。

雅代
私は自分の実感として、人間の何かに興味があったら大丈夫だと思います。

久岡さんは、出会いとか人との繋がりに魅力を感じているとおっしゃっていたけれど、私の場合は人間の感情に興味があります。感情と行動がどう結びつくか。どう感じ、どう動くかというところです。広く言えば、人間に興味があるってことですね。

だから、読んだものが「とても良い」と感じたときは、素直にその良さを認めて何が良かったのか、言葉のどの部分に、自分のどの感情が反応したのかを注意深く観察するようにしてトレーニングしています。

雅代さん

ーーお二人はどうしてコピーライターになろうと思ったんですか?

久岡
何かを伝える仕事がしたい、という気持ちが、根っこにずっとあって、はじめはカメラマンを目指していたのですが、なかなか軌道に乗らなくて。

そのとき息抜きで読んでいた中島らもさんのエッセイで、彼がコピーライターという仕事をしていたことを知り、なんだか面白そうな仕事だなと思ったのがきっかけです。

雅代
実は私はたまたま流れで。

もともと別の業務を担当していたんですけど、社内で文章作成の需要があって「書けそうやし、できそうだから手伝って」と声をかけられてセールスコピーを書き始めました。

ーーえっ、そんな風にコピーライターになることってあるんですね。

雅代
だから、自分から志望したわけではないセールスの仕事には最初、すごくコンプレックスを感じていました。私ももともと、CMのキャッチコピーや駅の広告コピーを考えるのがコピーライターだと思っていて、そういう仕事に憧れていたので。

でもやっていくうちに、人間の感情と行動の結びつきがダイレクトに感じられるところに、自分が取り組みたいことの本質があると気づいて、コンプレックスはなくなりました。セールスは、「感情が動く→買う」という行動を促すものだし、それが数字や売上で具体的に見えるので。

今では、セールスコピーの仕事をさせてもらえてよかったなと思ってます。

ーー久岡さんは志望してコピーの道へ入られたわけですが、コピーライターは大手広告代理店に入らないとなれない狭き門、というイメージがあります。どうやってカメラマンから転向されたんですか。

久岡
おっしゃるように、コピーライターの求人というものはそうそうあるものではないですし、しかも僕は大学に行ってないから、大手の代理店に入るのも無理。途方に暮れていました。

ちょうどそのとき、当時流行っていたSNSのmixi(ミクシィ)をはじめることになり、「ここならコピーライターという人種に出会えるのでは?」と探してみたら、案の定コピーライターのコミュニティが見つかったんです。

さらに、たまたまコミュニティの掲示板に、大阪でのコピーライターの求人が掲載されていて、しかも未経験歓迎という。急いでメッセージを送り、会いに行かせてもらい、そこの事務所で勤めることになりました。

ーー発想力と行動力で道は開けるんですね・・・!

久岡
コピーライターの求人は、おそらく今も少ないとは思います。だから入り口を見つけたら、どんなものでも迷わず飛び込んでみるのも手ではないでしょうか。

一度入ってみると、狭さゆえに横のつながりがあって、ちゃんと実力と人望をつけていけば、活躍の可能性は広がっていくと思います。

雅代
私のような例もありますし、得意だったら自然にそういう仕事が集まってくるので、コピーライターという職種でなくても、とにかくコピーや文章を扱っている業界に潜り込むと道が開けるかもしれません。今だったら、Webメディアとか。

言葉があふれる時代だからこそ、言葉を扱う力は財産になる

コピーライター対談風景


久岡
ネットの普及にあわせて、コピーライターの仕事もどんどん広がっていっていますしね。10年前にはWebライティングの仕事なんてほとんどなかったですし。

ネットでは特に、シンプルで軽い記事が好まれる。と以前は思っていたのですが、最近は、これでもかというくらい、自社の想いやサービスの強みを書き込んだサイトが注目され始めています。ハウツー的な記事に少し飽きがきて、内容、中身で勝負するもう少し骨太な情報や哲学が求められているのかなと思います。

この流れが広がっていけば、コピーライターこそ、そのお手伝いができるのかなと。

雅代
コピーも、ネットが普及しだして、短いフレーズだけだともたないですよね。

久岡
強い言葉だけじゃなくて、平熱で読めるような言葉が求められているのかなと思いますね。

ドーンと花火をあげて、一瞬のきらめきみたいなキャッチコピーではっとさせるような形ではなく、平熱でゆっくり暖かい、熱を長く伝えていくようなコミュニケーションが。

ーーずっとインターネットのお仕事をしてきた雅代さんもこうした変化を感じますか?

雅代
ネットの重要性は着実に上がっていると思います。

インターネットを利用する人が増えて、存在感がどんどん大きくなっていく中で、そこでの露出イメージが企業・商品のイメージにも影響を与えるようになってきていますし。

セールスコピーはこれまで、とにかく売ること、獲得数重視の傾向が強かったのですが、レスポンスをしっかり獲りながらも、ブランディングも並行してこなせることを求められるようになってきていると肌で感じています。

たとえバナー広告やLPであっても、初めて見る人にとっては、それがその会社のイメージになってしまうので。

ーーインターネットの普及で書いたり読んだりする機会が大きく増えたからこそ、言葉の扱いが大事になってきているのかもしれませんね。

久岡
形は変わっても、常に言葉は求められるんですよね。だから、やればやるほど、コピーライターという仕事には、ものすごく可能性があるなあとは思っています。

言葉って、いくらでもアレンジがきくし、ほんのちょっとで、180度印象が変わる。その上、予算や時間に縛られることもないから、すごく自由度が高いんですよね。

雅代
それに、頭の中で編集したプロセスや技術は誰にも盗まれない自分だけのもの。本当に財産だと思います。