こんにちは。a-worksライターの皆川です。
ビジネスの世界では、仕事につながる「人脈づくり」や、仕事を円滑にするための「コミュニケーション」の重要性が繰り返し訴えられ、ノウハウ本も溢れかえっています。
確かに、人脈形成やコミュニケーションの能力を身につければ、ビジネスマンとしてのスキルアップ間違いなし!
でも、本質的な成長をもたらしてくれるのは、そういう打算とは無縁の、一人の人との出会いや、関わりの中で受けた影響だったりしませんか?
今回お話を聞いたa-works顧問の和田さんも、他の人の影響があったからこそ、成長することができ、起業する自信がついた、と言います。
どうすれば出会いを無駄にせず、理想的な関係を築き、成長につなげることができるのか、実体験に基づいてお話いただきました。
アクトデザインラボ株式会社 代表取締役/a-works株式会社 顧問
和田宏樹さん
リクルート、Google日本法人を経て2016年に起業。
アクトデザインラボ株式会社を立ち上げ、社内研修の提供や、20代を対象にしたキャリアメディア「ブレイブアンサー」の運営、マーケティング支援に携わる。
自分の市場価値を上げるには思考を超えて行動を起こすことが大事
ーー普段からお仕事でたくさんの若い社会人に会っていらっしゃると思いますが、共通して感じることは何かありますか?
「いまの会社に勤め続けるキャリアで良いのかな?」という不安は、ほとんどの人が持っているようですね。
大企業に入りさえすれば勝手に給与があがって、そこそこ出世ができた高度経済成長期(1960年代後半〜1980年代後半)と違って、今はキャリア観も多様化していますし、インターネットのおかげであらゆる情報や選択肢が増えました。
だからこそ、次の行動がなかなか決められない。
2017年現在は、高度経済成長期のように、「大きな会社に入れば安泰」「公務員になれば安定」といった「キャリアの正解」がありません。
そんな時代には、特定の会社に入社することをゴールにするのではなくて、どんな状況になっても稼いでいけるよう、本質的な市場価値をあげていくことが大事と考えています。
会社やクライアントのせいにしても、市場価値は上がりません。
自分の市場価値を上げるには、思考をアクションで終えるというか、考えを行動に落とし込むところまでやることが肝心になります。
研修であったり主催しているイベントも、「今の会社で頑張る勇気が湧いた」とか「なんとなく不満をもってだらだら過ごしていたけど、そういう態度をやめようと決断する」とかそういう気持ちを生み出したいと思ってやっています。
ーー確かに、一人だとグルグル同じところを回る思考に陥って、行動までなかなかたどり着けないことが多いです。行動するには、そういう後押しも必要なんですね。
僕自身そうでした。
社会に出てからの僕の20代は、95%が挫折と失敗にまみれたツライ思い出なんですが、その中で勇気ある決断をしたときや成長したタイミングを振り返ると、自分一人でやり遂げたのではなく、他の人に与えてもらった影響がとても大きいです。
挫折も決断も成長も。すべての原点には心から信頼できる人たちの影響があった
ーー新卒でリクルート→Google日本法人へ転職→31歳で起業という超豪華なご経歴をお持ちなのに、95%が挫折と失敗だなんて本当ですか?
そうです。基本は失敗、挫折、敗北で構成されています。
営業目標を達成できなかったり、望まない転勤や異動があったり・・・。成功体験と言えるようなことはほとんどなかったですよ。
でも、今、やりたいことがやれているのはこのときの挫折経験のおかげです。
もう二度と経験したくないですけど、もし、もう一度20代をやるとしたら、絶対に同じ道を選択しますね。間違いなく。厳しい環境で経験する強烈な挫折は成長につながるので本当にオススメです。
ーーそんな厳しい状況で影響を与えてくれた人とは?
1社目のリクルートでは、クライアントの存在が大きかったです。
営業職でノルマは厳しかったですが、仕事内容は好きでした。クライアントの期待に答えたい、喜ぶことをしたいという気持ちが強くて、クライアントの役に立つことをやっているときは、充実感がありましたね。
辛かったのは、社内環境やルールのほうでした。
例えば私がいた営業部には、「商品目標」というのがありました。「この商品をいつまでにいくつ売ろう」という目標なんですが、当時はこれに違和感があって。
「クライアントが困っていることを解決するのが仕事なのに、なぜ会社が提供したいものを売るノルマがあるの?そしてそれをどうして売ろうと思えるの?」と、心の底から疑問を持っていました。
いまでは商品目標の意義や必要性もわかりますし、当時の自分がどれだけ「空気が読めないイタイやつ」だったかもわかります。
ただ当時は、そういうところにイチイチ引っかかって、結果も出せなくて。まったくうまくいっていなかったですね!
クライアントは、そんな社内でのことを相談させてもらっていました。
ーークライアントに社内の悩み相談・・・?そんな話をする関係が築けるものなんですね。
経験の浅い新卒の営業って、普通そんなに歓迎されるものではないのですが、何社かのクライアントは、すごくかわいがってくれました。ビジネスマンというか、一人の人間として接してくれましたね。
なかでも、柳田さんという方から頂いた「自分が何をどれだけやると、誰がどれだけ喜ぶのか。20代はそれを知るために死ぬほど頑張れ」という言葉、とっても印象的で、今でも大切にしています。
前述の通り、 僕は社内ではとてもイタイやつでしたので、居心地はよくなかった。ただ、クライアント様に恵まれたおかげで、仕事に打ち込むことができました。
いまも大事にしている「誰よりも自分のクライアントを幸せにする」という仕事観は、この時のクライアントの皆様によって形成することができました。
ーー社内では、そういう人に出会えなかったということですか?
いいえいましたよ!僕みたいなのをかわいがってくれる、変わった先輩や上司がいました。とてもお世話になりましたし、起業のきっかけを作ってくれたのは、この時の先輩だったりします。
こうして社内にも味方をしてくれる人がいたのですが、成果をあげることができず転職をしました。正直、逃げでしたね。
ーー辞めたことを後悔していますか?
辞めたこと自体に後悔はありません。転職は自分を見つめ直すきっかけになるし、複数の会社でいろいろな人と働く多様な経験は成長に繋がりますので、僕は転職には肯定的な立場です。
また、僕のケースはそんなことないですが、世の中には、逃げたほうが良いようなブラックな会社もありますので、成果をあげるまで転職するな!という考えは一切ないです。
ただ、誰か1人でも心から信頼できる人がいるならば、その人からの学びはとても大きなものです。自分のことを信頼して、応援してくれる先輩や上司がいたのに、期待に応えず逃げたことには、思うことがあるのも事実です。
ーー転職先でも人から影響を与えてもらう経験はあったんでしょうか?
転職してからは、とにかく成果にこだわって仕事をしました。超厳しい兄のような上司のおかげもあり、成果を出すことができました。
その成果が認められて、グローバルセールスチームに異動になったんです。成績のよい営業だけを集めて、世界中の優秀な人とチームを組んで活動する、といったチームでした。
あのときは超鼻高になってましたね。
それなのに、そのプロジェクトからたった半年で降ろされてしまって、いわゆる「絶頂からどん底」っていう経験をしました。
このどん底の時に、助けてくれた上司や先輩、同僚がいました。彼らの存在、彼らから与えてもらった影響はとても大きかったです。
あらためて基礎からビジネスを教えてくれた先輩がいたり、「どんな状況になっても、応援するよ。飲み行こうぜ!」といってくれる同僚がいたりね。
ちなみに、絶頂からどん底に突き落としてくれた上司にも、いまでも本当にお世話になっていますよ。
ーーえっ?自分にどん底に突き落とした人といまでもお付き合いがあるのですか?
ありますよ!起業後も相談に乗ってくれます。「会社やってんなら、この本読め」って、本を送ってくれたり。
キツい経験でしたが、振り返ってみると自分の驕りに気づけたし、心から信頼できる人たちの存在が支えとなって、このときは転職に逃げることなく、残念な自分を受け入れてまた一から頑張る、という決断をすることができました。
この経験のおかげで自信がついて、大学生の頃から思い描いていた起業に31歳にして踏み切ることができました。「あんだけ辛い挫折があってもなんとかなったんだから、起業してもなんとかなるんじゃねぇの」って。
プロジェクトから僕を降ろした上司も、僕の高すぎる自己評価と実力のギャップを見抜いて、愛をもってやってくれたんだと、気づくことができました。
人からの影響を成長に活かすコツ
ーー挫折に潰されず頑張れたのは出会った方々の支えがあったからなんですね。人の影響の大切さがよくわかりました!でも、そんな風に向き合ってくれる人とはどうやったら出会うことができるんでしょうか?
新しい人と出会う確率をあげるために僕が実践しているのが、空気感が合うな、と感じる知人友人の側に身をおいて、積極的にコミュニケーションをとることです。
「類は友を呼ぶ」といいますか。そういう人の周りには、同じ空気感の人が集まっているので、自然に人脈が広がっていきます。
でも、人脈が広がらないという人は「実はもう出会っているけど、気づいていない」というケースの方が相当多いんじゃないかと思います。
こうやってストーリーとして聞くと、鍵を握る人と運命的に出会って、いきなり核心をつくことを言ってくれる、という感じがするかもしれませんが、実際は、日々の関係性の中から生まれてくるものなんですよね。
成長の後押しをしてくれる人と出会っているけど気づいていない人は、その関係性を築くための自己開示が足りていないと感じます。
僕は基本的に思ったことを言ってしまうタイプですが、だからこそ相手もタブーなくなんでも話してくれるんだと思います。
研修やイベントでも、一歩引いて自分の殻に閉じこもってしまう人はもったいないな、と感じます。
ーーなるほど。自分から動いた結果、良い影響を与えてもらえるような関係が築けるのですね。
人だれでも最後には死にます。1年で100人に会うと仮定して、人生80年で計算すると、一生で会えるのはたった8,000人。
今そばにいる人は、そのうちの貴重な1人です。例えそれがむかつく人でも、自分の人生の大切な一部なのは間違いない。
もちろん自分のことを話すだけでなく、相手へのリスペクトをしっかり伝えることも大切ですよ。
恩師との出会いで確信した「人には人を変える力がある!」ということ
ーーよくビジネス書なんかで強調される「人脈」ってそこから利益を得たい、という欲が主体になっているように感じますが、和田さんの場合は、人への信頼感というか、人間愛みたいなもが根底にあるんでしょうか?
そうですね。僕は、人には人を変えるパワーがある、と信じています。
中学校の頃、性格に問題があったので、うまくいかない先生も多かったのですが、一方で少数でしたが僕を全肯定してくれる先生もいました。
「この高校へいったらお前より優秀なやつしかいなから人生変わるよ」と、難関校への進学を薦めてくれて。しかも、口だけじゃなくて、毎晩深夜近くまでつきっきりで、その高校に入るための勉強を教えてくれたんです。
そのおかげで先生に薦められた高校に入学することができたのですが、先生の言ったとおり、同級生達が、勉強においても人間性においても、自分より圧倒的に優秀だったんです。
その高校に進学して、大げさではなく、人生観が一気に変わりました。
ーー「人の影響を認めて受け入れる」という過程が原点にあったんですね。
そうですね。このときに、「たった一人の人との出会いで人は変われるんだ!」と確信したからこそ、その後の人生でも、人を信じて関わろうとする気持ちを持ち続けていられるんじゃないでしょうか。
こうして影響を与えてくれた人たちへのお返しの意味も込めて、関わる人たちの決断にプラスの影響を与えられるようになりたい、と思って日々仕事をしています。
人付き合いが苦手だったり、仕事が何よりも大事だったり、いろんな人がいますが、どんな人でも結局、人間関係が一番の関心事なんじゃないかと思います。
今、行き詰まって悩んでいるのであれば、すぐに突破する行動をするのは難しいですが、少しでも目の前の人に関わろうとすることなら始められるのではないでしょうか。
ーー本質的なコミュニケーションで大切なことは、相手を信じて自分から動くことなんですね。今まで人との関わりを難しく考えてしまっていましたが、とてもシンプルで心から納得できました!
和田さん、ありがとうございました。